卒業生の研究テーマ
- 「夢女子」の恋愛観に関する研究
本研究では,「夢女子」を自称している青年期の女性の恋愛観を明らかにするために質問紙調査とインタビューの2つ調査を実施した。質問紙調査では,夢女子群と一般青年群で恋愛に対する価値観に大きな違いは見られなかったが,夢女子は「推し」に対して独占欲を感じたり,同じ人が好きな人(同担)に嫌悪感を覚えることが示された。インタビュー調査では,夢女子が「推し」に対して抱く感情は恋愛感情あるいは擬似的な恋愛感情であることが示唆された。
- 親密性が仮想的有能感と他者に生じた出来事に対するネガティブ感情との関係に与える影響
本研究では、他者に起こった出来事に対するネガティブ感情が,仮想的有能感のタイプと親密度によって変わるのかを検討した。大学生79名を対象に質問紙調査を実施した結果,親密な他者に不幸な出来事が起こった場合にネガティブ感情を強く受けることが示されたが,有能感タイプによる変化が見られたのは悲しみ条件のみであった。また、親密度によって感じるネガティブ感情の変化はいずれの条件においても確認することができなかった。
- 大学生および10代青年の予期せぬ妊娠に関する心理学的研究 --自己開示と援助要請,逃避する男性の心理,そして支援に焦点を当てて-
本研究では「大学生および10代青年での予期せぬ妊娠を経験した女性の内的体験と心理支援のニーズ」「パートナーの予期せぬ妊娠から逃避行動を選択する男性の心理的状態」を検討した。質問紙調査では大学生637名を対象に、大学在籍中の妊娠経験、自己開示と援助要請などの内容から構成されるアンケートを行った。その結果、大学在籍中に妊娠を経験した女性は19名、男性は22名であった。そして女性は、もし予期せぬ妊娠をした場合、親しい友人への開示は異性との交際経験があること・性的リスク対処意識が正の影響を与えていた。家族への開示には、家族からのサポートが正の影響を与え、友人からのサポート・年齢は負の影響を与えていた。援助要請は家族からのサポートの影響が有意であった。男性は、親しい友人への開示は友人からのサポートが正の影響を与えていた。開示抵抗には、将来に対する目標の持たなさ・事態の深刻度影響度の評価は正の影響を与えていた。家族への援助要請には現実の充実感・目標指向性が正の影響を与えていた。インタビュー調査では、10代で予期せぬ妊娠を経験した2名を対象に実施した。その結果、信頼できる大人や友人が身の回りにいると援助要請が促進されることや、実際の妊娠出産子育てのメリットデメリットを経験者から説明があると将来のことを想像しやすいことから、そのような支援があるといいことが示唆された。また,性教育の普及や見直しを行うことも重要であると推測する。
- 類似度の低い他者に対する自己開示を促進させる要因の検討
本研究では、対人不安、ソーシャルスキル、視点取得、柔軟性についてのアンケートを取って分析を行い、これらの要素が類似性の低い相手に対する自己開示を促進あるいは抑制するのかを検討した。大学生116名を対象に質問紙調査を行った結果,自己開示得点を目的変数とする重回帰分析では,困難な経験についての項目から構成されているレベルⅡでは非類似度と対人不安、非類似度と視点取得の交互作用が有意であり、決定的ではない欠点や弱点についての項目で構成されているレベルⅢでは非類似度と対人不安、非類似度とソーシャルスキルの交互作用が有意であった。レベルI〜レベルIVの合計である自己開示得点では非類似度と対人不安の相互作用が有意であった。そこで、有意差がみられた変数について単純傾斜分析を行った結果、レベルⅡ、レベルⅢ、自己開示得点では、対人不安が低い場合は類似性が低い相手に対する自己開示が促進される可能性が示唆された。また、レベルⅡとレベルⅢでは、視点取得が高い場合は類似性が低い相手に対する自己開示が促進される可能性が示唆された。
- LGBTQ+当事者が抱える悩みや不安と当事者同士のピアグループが持つ機能についての研究
本研究では、LGBTQ当事者が抱える悩みや不安と,当事者とその関係者の会(LGBTQのピアグループ)の機能について検討を行った。明らかにすることを目的としている。研究1ではLGBTQ当事者が集う会を運営しているA 団体にコンタクトを取り,団体の設立の経緯や構造についての情報を収集した。さらに,A団体に筆者自ら参加し参与観察を行った。次に,研究2ではLGBTQ当事者の方2名へのインタビュー調査を実施した。インタビューの結果,当事者が抱える悩みや苦労については、自分の性自認や性的指向についてははっきりと分からないため知りたいということ、会社や学校以外で自分の居場所が欲しいため参加していることが多く挙げられた。また, A団体のような LGBTQ当事者が集まるピアグループがあることで、LGBTQ 当事者の方たちが生き辛いと感じていたことや、自分の性について他の人と違うのでは無いかと感じていた部分を話せる場があるということを知ることができるだけで安心できるということが示唆された。
- 「推し活」による生活習慣の変化における肯定的・否定的側面の研究
本研究では,「推し」の影響による生活習慣や価値観や考え方の変化に着目した調査を行った。推しの存在の有無,推しのジャンル,推しの影響から新しく始めたこと,研究室で作成した推しの効用認知尺度および推しに対するコミットメント尺度,新しく始めたことに関するメリット・デメリットから構成されるアンケート調査を実施し,大学生44名を分析対象とした。クラスター分析を行なった結果,ポジティブなオタク,消極的なオタク,非オタク,課金オタク,限界オタクという5つのクラスターが得られた。クラスターごとに得点の比較を行った結果,非オタク以外はポジティブ感情や活力・エネルギーの数値が高いことから,効用の認知が高く,推し活をすると,ポジティブな効果が得られることが分かり,自由記述の結果からも自身の内面的な変化が大きく現れていることが分かった。また,各クラスターに共通して,推しの影響で価値観や人生観が変わったという結果が挙げられた。以上のことから,推し活によって生じる肯定的な変化の存在が示唆された一方で,特に「推し」に対するコミットメントが高い限界オタクにおいては日常生活への否定的な影響も見られることがしされた。より健康的な推し活をするためには,推しを人生の軸にするのではなく,あくまでも趣味の1つとして捉えるのが大事なのではないかと考える。
- 大学生の友人関係と不登校傾向
本研究では、大学生の友人関係と大学生の不登校傾向について検討を行った。大学生73名を対象に,友人関係に関する項目,大学生の不登校要因と不登校傾向を想定する項目から構成される質問紙調査を実施した。相関分析を行った結果、友人関係の「行動共有」と不登校要因の「学業脱落」には正の相関がある傾向が認められた。重回帰分析では,不登校傾向の「大学不適応感」には、友人関係の「相互尊重」,「親密さ確信」が負の影響を,「行動共有」が正の影響を与えていた。不登校要因の「学業脱落」には,「行動共有」が正の影響を与えていた。不登校傾向の「登校回避行動」には、「行動共有」が正の影響を与えていた。不登校傾向の「登校回避感情」には、「行動共有」が正の影響を与えていた。
- 子が認知する親の養育態度が大学生の自己肯定感に与える影響に対する恋愛関係の調整効果
本研究では,子が認知する親の養育態度が,自己肯定感に与える影響に対して,恋人との関係や恋愛に対する態度がどのような効果をもつのかについて明らかにすることを目的とし,大学生159名を対象にアンケート調査を実施した。調査内容は,親の養育態度,自己肯定感,恋人の有無,恋人がいる方は恋人との交際期間,恋人との関係,恋愛観について尋ねた。その結果,重回帰分析では,統制的な養育態度と恋人との付き合いづらさで,交互作用が有意な傾向が見られたものの,その他の変数の主効果および交互作用項目は有意ではなかった。従って,子が認知する親の養育態度が,自己肯定感に与える影響に対して,恋愛面での修正効果は見られなかった。しかし,単純傾斜分析にて,恋人との付き合いづらさが低い場合は,統制的な養育態度が自己肯定感に有意な負の影響を与えていた。従って,子が親の養育態度を統制的だと認知している場合,恋人との関係において,付き合いづらいと感じている方が,自己肯定感が高くなる可能性が考えられた。また,2要因分散分析にて,親の養育態度が非受容であると認知していると,自己肯定感も低下し,恋愛面では,恋人への役割遂行評価,恋人への安心感,恋愛向上思想において,満足感が得られないということが示された。
- 孤独不安および疎外不安がLINEの強迫的利用に与える影響
本研究では,SNSの強迫的利用の心理的要因について検討した。LINEを使用している大学生86名をを対象にアンケート調査を実施した。その結果,孤独であることに対する不安がLINEの強迫的利用を促進させる可能性が示唆された。また,ソーシャルサポートがLINE返信不安・強迫を緩和させる可能性が示唆された。
- 推しに対するコミットメントが推しのスキャンダルへの反応に与える影響
本研究では「推し」に法律的に問題のない熱愛スキャンダルが起きた場合のファンの推しへのコミットメントや熱愛スキャンダル後の反応などについて研究した。web質問紙を用いて 118名を対象に調査を行った。推しのジャンルや三次元の「推し」の有無、研究室で作成した「推し」へのコミットメント尺度、出来事インパクト尺度を元に作成した熱愛スキャンダルへの反応尺度,およびスキャンダル発覚後に推し続けるかをデータとして収集した。「推し」へのコミットメント尺度を用いてクラスター分析によって参加者を群分けした結果,6つのクラスターに分けられた。次に,三次の推しがいると回答した 77名を対象に、推しの熱愛スキャンダルへの反応を比較した結果、推しへのコミットメントが高い群では,スキャンダルを受けて心身に大きく影響を受けることが示唆された。
- 親の養育態度が大学生の自己肯定感てに与える影響-小学生から現在までの親の自立性援助に着目してー
本研究では,小学生の頃から現在までの親の養育態度が現在の自己肯定感にどのように影響を及ぼすのかを検討した。大学生104名を対象に質問紙調査を行った結果,養育者からの自立性援助は,小学生段階に比べて,高校生段階の自立性援助が有意に高いことが示された。また,小学生から現在の各段階における養育者からの自律性援助得点を用いてクラスター分析を行った結果,自立性援助が小学校から通して低いことが共通している過保護群と親従属群で自己肯定感に違いが見られ,過保護群は自己肯定感が比較的高いが,親従属群は全ての群の中で全体的に自己肯定感が低いことが示された。
- 友人との親密度が友人のいじめ被害への介入に与える影響:自由記述分析による検討
本研究では、いじめを傍観する,あるいは止めに入る要因として友人の親密度に注目し、傍観者が友人のいじめ被害に対して止めに入る・入らないのはなぜなのか検討をした。大学生63名を対象に質問紙調査を行った結果,親しい友人に対する対応と親しくない友人との対応では差が見られ、同じ選択肢を選んだ場合でも,その行動の背景にある動機が異なることが示唆された。今後は友人との関係以外に、回答者と加害者側との関係を検討する必要があるだろう。
- ストレスがコーピングとしての消費行動に与える影響
本研究では、ストレスを感じた際に、コーピングとして行う消費行動に使用する金額に違いが生じるのかを検討した。アンケートフォームを利用したオンライン実験を大学生42名に行い、結果、ストレス脆弱性の高い人に対して値段の安い食品を報酬として設定した場合、実験作業を行った後に有意に購買意欲が高くなった。また、お金を重要なものだと捉えている傾向が高い場合、使用しても良いと感じる金額の上限が有意に高い事が分かった。今後は,購入する商品の種類を変更したり,クレジットカード決済やバーコード決済など,決済方法の違いに着目する必要があると考えられた。
- 慰めの受け取り方による感情と愛着スタイルの関係性
本研究では,大学生を対象に親しい友人から受ける慰め方の違い(「励まし」,「共感」,「何もせずそっと離れる」)による,慰めの受け手に生じる感情の違いと,その要因として愛着スタイルについて検討した。大学生181名を対象に,親しい友人からの慰めに対する反応,および愛着スタイルなどを測定する尺度から構成されるアンケート調査を実施した。分散分析の結果,慰め方のうち,共感が最も感謝の得点が高かったことから,受け手の状況と気持ちに寄り添う対応である共感は好意的に評価されやすいと考えられた。また,自責の感情で愛着スタイルの主効果が有意であることが示され,恐れ型は慰め方によらず,親しい友人からの慰めに対して自責が高くなることが示唆された。最後に,愛着スタイルが慰めに対する評価と感情に与える影響を検討するためにパス解析を行なった結果,見捨てられ不安が自責に正の影響を与えていることから,見捨てられ不安が高い者は慰めを同情として受け取ることや,対人不安,自尊心,依存が慰めに対する反応に関係していることが考えられた。
- 実験者の性格演技が被験者のパーソナルスペースに与える影響
本研究では実験者の性格演技が参加者のパーソナルスペースに与える影響を検討した。実験方法として、実験者が参加者に対して「明るい」–「陰気」という条件の性格演技を行い,各条件でそのような第一印象を参加者に与えるよう工夫した上で、参加者が実験者に対して前後左右斜めの八方向から接近するよう求めた。実験には大学生と大学院生21名が参加した。実験の結果,パーソナルスペースと性格演技の条件には統計的な関連が見られなかった。原因として,サンプル数の不足,あるいは性格演技の条件が不十分であった可能性が考えられる。
- 物的報酬が援助行動に与える影響の検討
本研究は物的報酬(物やお金によるお礼)が援助行動に影響を与える可能性を検討した。大学生41名を対象に質問紙調査を行い,重回帰分析を行った結果、物的報酬は援助行動を行う際の要因とは言えないことが示唆された。しかし,物的報酬が援助行動を行った際の報酬として、満足感を与えている事が結果から考えられ、援助行動を行い,物的報酬が返ってきた結果,満足感が得られた場合に,次の援助行動に繋がる可能性があると考えられる。また,援助を行う対象ごとに心的報酬の違いはあるが、感謝の言葉や自己成長が援助行動の要因になっているのではないかと考えられる。
- 自己意識とユニークネス欲求が大学生における刺青(タトゥー)の印象や抵抗感に与える影響
本研究では、刺青(タトゥー)対するイメージや許容の程度,刺青(タトゥー)に対する公共空間における抵抗感に対して,自己意識とユニークネス欲求が与える影響を検討した。質問紙調査を行い,男性26名,女性68,その他1名,合計95名から回答が得られた。結果では,刺青(タトゥー)に対するイメージでは、ネガティブなイメージが相対的に高いことが示唆された。また,重回帰分析の結果,公的自己意識は刺青(タトゥー)に対するネガティブなイメージに影響を与えていた。ユニークネス欲求は項目レベルの分析では刺青(タトゥー)に対するイメージと関連が見られたが,全体としては関連が認められなかった。本研究では、いくつかの尺度でα係数が低い結果となったことが限界の一つとして挙げられる。
- 自尊感情の脆弱性と目下の者への攻撃性について
本研究では、自尊感情の脆弱性と目下の者への攻撃性について検討を行った。大学生150名に質問紙調査を行った結果、学習成績や仕事の成果によって自尊感情が変動する者は,目下の者への攻撃性が高くなる傾向が示された。また、他者評価、外見的魅力、倫理観によって自尊感情が変動するものは、目下の者への攻撃性が低下する,逆に言えば,他者評価、外見的魅力、倫理観によって自尊感情が変動しない者は目下の者への攻撃性が高くなる傾向が示された。今回、自尊感情の脆弱性が目下の者への攻撃性に関係すると予測したが,自尊感情が変動する要因の違いによって、仮説とは異なる結果が得られた。今後は共感性という要素を付け足し、目下の者への攻撃性について検討を行う必要があるだろう。
- 瞼の形と涙袋の有無が形成する目の魅力と印象について
本研究では、目の形が印象形成にどのような影響を与えるのかについて検討した。大学生75名を対象に質問紙調査を行った結果、「一重+涙袋あり」は最も印象が悪く見られやすく、「二重+涙袋あり」は印象が悪く見られにくいことが示唆された。「二重+涙袋なし」は最も活気のあるように見られやすく、「一重+涙袋なし」は活気のあるように見られにくいことが示唆された。「二重+涙袋なし」は最も根暗に見られやすく、「一重+涙袋なし」は根暗に見られにくいことが示唆された。また、男性よりも女性の方が、どの目に対しても,「安っぽく、重々しくない目」と捉えてることが示唆された。印象の良い目の形から順に優劣をつけ得点化した結果、「一重+涙袋なし」は一番印象が良く、次に「二重+涙袋あり」、「一重+涙袋あり」、そして「二重+涙袋なし」が一番良い印象を受けにくいという結果になった。二重と涙袋の有無は,どちらか片方のみだと違和感を覚え,ネガティブな印象を持たれやすい可能性が考えられた。
- ダイエット行動と体型の信念の関係 ダイエット行動によるクラスターに注目して
本研究では過剰なダイエットを行っている人の特徴を明らかにすることを目的として,大学生における体型の信念・ダイエット行動について調査を行った。大学生99名を対象に質問紙調査を実施した結果,体型の信念では有意な男女差がみられなかった。また,過剰なダイエットを行っている群は、ダイエットを行っていない群や、平均的な群に比べて,自己評価の信念、承認の信念、ダイエットの信念が有意に高いことが示された。非構造的ダイエットを行う者は必ずしも摂食障害傾向があるわけではなく、短期的に健康的である構造的ダイエットを併用して行っている可能性が考えられた。